PDF 変換 ソフトへの驚きと期待
そこで生まれたのがクーポンをeビジネス化した電子クーポンです。
電子クーポンを発行している米国のマーケティング企業の中でもっとも有名なのはKマーケティング社です。
同社は日本にも進出しており、一九九七年頃からは大手流通業と組んでクーポンの発行テストを開始しています。
同社が発行するのはチェックアウトクーポンと呼ばれているタイプで、クーポン券はレジに接続された小型専用プリンターで一枚一枚印刷されます。
その特徴は、購入された商品のバーコードをレジのスキャナーが読み込んだ際、それがクーポン発券対象商品であった場合のみ、プリンターが自動的に動き出してクーポンを印刷する、ということです。
このシステムを利用すれば、たとえばドッグフードを購入した人にだけ、別のドッグフードのクーポンを発行する、またAブランドの商品を購入した人に、競合するBブランドのクーポンを発行する、といったことが可能です。
さらにワインを購入した人にチーズのクーポンを、コンタクト保存液を購入した人に、メガネチェーンの新店舗オープニング優待クーポンを発行する、といったことも考えられます。
この場合、特に大切なことは、自社ブランドを愛用している人、つまり割り引かなくても自社商品を購入してくれる人に対しては、クーポンを発行しないということです。
これが自社商品の価値を維持することに役立ち、利益の増加をもたらせます。
自社製品の愛用者に対しては、クラスをアップした自社新商品や、関連するような自社製品のクーポンを発行することもできます。
このクーポンはチラシに付けられるような通常のタイプに比較して、割引率も高く設定されています。
通常タイプが数十セントの割引であるのに対して数ドル単位の割引を行うことも珍しくありません。
命中率が高い上に割引率も高いので、チェックアウトクーポンのリデンプションレートは通常タイプの四-五倍にもなります。
K社が発行するクーポンの枚数は前述のような効率の良さが評価されて、年間一一○億枚以上にも上っています。
また同社の成長率は年間二○〜二五%と言われており、すでにほぼ全米のスーパーマーケットと量販店、ドラッグストアチェーンに同社のクーポンシステムが導入されています。
しかしこのクーポンにも弱点はあります。
それはクーポンを発行した時点では、対象となる消費者がすでに商品を購入してしまっているということです。
ゆえに自社商品を購入してくれるチャンスがあるのは、今購入した商品を消費し終わった後、再び店舗を訪れる時です。
その間にクーポンを紛失してしまうこともあるでしょうし、クーポンの存在自体が忘れられてしまう可能性も大きいでしょう。
それを防ぐために一番いいのは、商品が必要になる頃を見計らって、クーポンを手渡すことです。
はたしてそんなことが可能なのでしょうか。
米国の消費者の多くがスーパーマーケットでの支払いに個人小切手を使います。
その信用保証のために彼らはスーパーマーケットが発行する保証カードをレジで小切手といっしょに提示します。
また最近では、店舗が発行するFFPカードを提示する消費者も多くなりました。
これらのカードがレジでスキャンされることによって、現在レジ前に立っている匿名の顧客が「1234」という番号を持った顧客に変わります。
次回から1234さんが買い物のたびにこのカードを提示してくれれば、「この人は第4火曜日にAブランドのドッグフードを購入する」というようなデータがレジに接続されたコンピュータに蓄積されて、1234さんのおおよその買い物パターンが読めるようになってきます。
そこで1234さんにドッグフードを売りたいBメーカーはK社に依頼して、1234さんが第3週目に来店したとき、すなわち、そろそろドッグフードが残り少なくなってきたときに、Bブランドのドッグフードの5ドル割引クーポンを発行するのです。
いくらAブランドを長年愛用しているプランドロイャルな1234さんであっても、5ドルクーポンを無視するのには、少々勇気が必要です。
結局第4週目のショッピングで、1234さんはBブランドのドッグフードを試してみようという気になります。
はたしてテレビ広告でこんなことが可能でしょうか。
このクーポンはダイレクトメールとして郵送されることもあるようです。
その場合には商品によって、サンプルを付けることも可能でしょう。
お断りしておきますが、私はマス広告を否定しているわけではありません。
もちろん米国においてもテレビ広告には大きな予算が割かれていますし、一定の効果を上げているのは確かです。
ここでお伝えしたいのは、米国ではマーケティングミックスという考え方の中で、最大の効果と最大のリターンを生み出すように、バランスを考えて予算が配分されているということです。
前述のチェックアウトダイレクトにしても、Bというブランドの存在を1234さんが知らない場合には、たとえ5ドルのクーポンがあったとしてもブランドスイッチを行わせることは難しいかもしれません。
大切な愛犬にわけのわからないペットフードを食べさせたくはないのです。
1234さんがこれまで試したことのないブランドを試す気になったのは、たまたま先週子供と一緒に見た、世界の名犬を特集したテレビ番組の中で流されたBブランドの広告が記憶に残っていたからかもしれません。
またせっかくBブランドを試したのに、価格と品質のバランスが悪くて、満足できなかったような場合には、継続的な購入につながっていかないのはもちろんです。
今、消費者の前には無数の選択肢があります。
商品の完成度も高く、品質的にも充分以上の満足を得られる商品だけが生き残ることができます。
そしてクーポンを使ってBブランドを試した結果、B社に対して興味を抱いた1234さんが、知りたい企業情報や商品情報をいつでも望む方法で得ることができるように、B社のインターネットアドレスや無料電話番号がパッケージに記されていることも重要です。
現在、米国ではほとんどの消費財メーカーが自社、あるいはブランドごとにホームページを開設しており、そこで詳細な情報を提供しています。
もっとも、電子メールをダイレクトメール式に利用して、不特定多数に一方的にメッセージを送りつける乱暴な広告のスタイルもあります。
米国ではこれを「スパム」と呼び、もっとも嫌われるオンラインマーケティングの一つです。
では、eビジネス的な広告とはどのようなものになるのでしょうか。
広告には不特定多数のマスを対象としたものと、特定少数にターゲットを絞ったものとがあります。
eビジネス的な広告においてはターゲットを絞ったものが主流となります。
というのも、マス広告の媒体となるマスメディアは、視聴者に向けてメディアが一方的にメッセージを発するワンウェイのコミュニケーションメディアで、受け手がどのような人であるかを知ることはできないからです。
一方、コンピュータを使った広告においては、コンピュータ側から消費者に向けて一方的にメッセージを発することはなく、受け手からのリクエストがあって、初めてコミュニケーションが成り立つからです。
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